ぼくは20歳から22歳にかけて東京に住んでいた。その間、いろいろな女性との出会いがあったのだが、付き合うまでには到らなかった。高校時代に好きだった人の影を、ずっとぼくは追っていたのだ。

 東京に出て二ヵ月目のある夜、
「いったい彼女のどこが好きなんだろうか」
 と考えていた。
 同級生とはいえ、さほど会話を交わしたこともなかったから、相手の性格もよく知らない。決して美人でもなかった。
 卒業アルバムなどを見ながら色々考えていくうちに、ハタと気がついた。
「そうだ、これだ!」


ショートホープ・ブルース
ねえ、ちょっと目を閉じると
君の姿が見えてくるんだよ
ねえ、ちょっと君が笑ってくれると
ぼくはまた眠れなくなるよ

ねえ、寝付かれない日々だけど
いつもぼくはショートホープを
ねえ、いつか君にあげたいんだけど
君にはとってもわからないだろうね

 ねえ、だからさ わからない君に
 ブルースを歌ってあげるよ
 ねえ、優しすぎる君の頬に
 ショートホープ・ブルースを

ねえ、いつか君と暮らすんだよ
だからぼくはショートホープ・ブルース
ねえ、いつか君と暮らすんだよ
だからぼくはショートホープ・ブルース

 つかの間の夢に うつむいたぼくの心を
 静かになだめてくれる
 ねえ、だからそんな君の頬に
 ショートホープ・ブルースを

ねえ、いつか君と暮らすんだよ
だからぼくはショートホープ・ブルース
ねえ、いつか君と暮らすんだよ
だからぼくはショートホープ・ブルース


 やや面長で頬のこけていた高校時代のぼくには、丸顔の彼女のやや膨よかな頬が魅力的に映ったのだ。その頬に淡い望みを持ったわけだ。

 詞はその時に書いたもので、曲は他の歌詞に使っていたものを使った。
 この歌、えらく難しくて、長いこと歌いこなせずにいた。何とか人に聴かせられるようになるまで十年近くを要している。自作曲でそこまで時間のかかった歌はなかった。
 さらに難しかったのがギターだった。ピックが思っている弦に当たってくれないのだ。これは今でもそうで、なかなか思うようにいかない。