【1】 終戦後、進駐軍が羽田空港拡張のため、そこにあった神社を移転させようとした。 ところが、ご神体は無事移転できたのだが、鳥居だけはできなかった。 鳥居を動かそうとすると、事故が起きるのだ。 そのため、鳥居だけはそこに残すことになったという。 きっと神様の怒りに触れたのだろう。 ぼくが通った高校のグラウンドの隅に、大きな磐がある。 そのため、グラウンドをいっぱいに使うことができなかった。 その磐は、猿田彦を祀ってあるのだという。 グラウンドを作る時にそれを退けようとしたらしいのだが、羽田と同じく事故が起きたという。 それで、そこに残してあるのだと、先輩が言っていた。 同じく隣の区のある場所に、なぜか道路を塞いでいる祠がある。 取り除けば道はまっすぐになるのに、その祠のせいで、そこだけ道はロータリーのようになっている。 地元の人に、「どうして、あんなところに祠があるんか?どこかに移転させればいいのに」と言うと、「昔、あの祠を退けようとして、バチが当たった人がいるらしく、それで退けられないんよ」と言っていた。 ぼくの住む区にも、道の真ん中にしめ縄をした樹木があるところがある。 当然、道はその樹木をよけるように作られている。 そこも、先の話と同じような言い伝えがある。 こういう話を信じない人にとっては、「偶然そうなっただけ」だとか、「馬鹿らしい。迷信じゃないか」ということになるのだろうが、実際にそういう人たちの言う「偶然」や「迷信」を根拠に人が動いているのだ。 これを否定することは出来ないだろう。 こういうことはどうして起きるのだろう。 それは、そういったものがあるところが、然るべき場所だったからだと、ぼくは思う。 神社や祠というのは、日本全国いたる所に存在する。 しかし、それは意味なくそこに建っているのではない。 それなりに由縁があるものだ。 まあ、何でその地域にそういうものがあるかなんて、調べるのも大変である。 また、それを取り除こうとすると、どうしてそういった災いが襲いかかるのかというのも、今の科学ではわからない。 然るべきところにあるものだから、そっとしておくのが然るべきことなのだろう。 【2】 ところで、古い神社というのは例外なく、「ある法則に基づいて建てられている」ということを、かつてある本で読んだことがある。 その法則とはどんなものかというと、地形の高い所(山や丘陵だけでなく、森の一番高い木のこともある)と高い所を結ぶ線上にあるということである。 その線上のことを、その本では『イヤシロチ(弥盛地)』と呼んでいた。 そういう場所は決まってマイナスイオンが発生するのだという。 神社に行くとすがすがしく感じるのは、そういう土地だからだそうだ。 そういった場所は神社に適しているだけではなく、農作物もよく育つらしい。 農作物がよく育つということは、神に祝福されている土地ということである。 つまり、『イヤシロチ』というのは、神の宿る場所だということになる。 だからこそ、昔の人は神を宿らせようとして、つまり豊作を願うために、『高み』をたくさん造っていったのだろう。 それが日本各地に残っている人工造山ということになる。 人工造山といえば、エジプトのピラミッドもそうであるが、あれもそういった理由、農作物の育成のために造られたのではないか、とぼくは思っている。 信仰のためだとかお墓だとか言われているが、要はやせた土地を肥やすがために造られた、いわば古代のマイナスイオン発生機だということだ。 ちなみに、「ピラミッドは日本人の祖先が造った」と密かに語り継がれているという。