とりあえず、背筋をピンと伸ばしてみるんだ
とりあえず、前だけ見つめて歩いてみるんだ
とりあえず、挨拶だけでも交わしてみるんだ
とりあえず、相手の目を見て話してみるんだ
とりあえず、肩の力をスッと抜いてみるんだ
とりあえず、深呼吸を何度かやってみるんだ
とりあえず、鏡の中に笑顔を写してみるんだ
とりあえず、できると心に宣言してみるんだ
とりあえず、無心を心がけてやってみるんだ
とりあえず、ノートに願いを書いてみるんだ
とりあえず、明るい未来像を描いてみるんだ
とりあえず、なりたい自分を演じてみるんだ
とりあえず、ありがとうを口にしてみるんだ
とりあえず、全てに大丈夫と思ってみるんだ
とりあえず、今日は一歩だけ進んでみるんだ
カテゴリ: 生活
オリンピック
妖怪
山には天狗がいるから
決して一人で行かない方がいい。
バキッと木の裂ける音がするのは
天狗がさらおうとしているのだ。
川には河童がいるから
決して一人で行かない方がいい。
その流れに見とれてしまうのは
河童が引き込もうとしているのだ。
森には狐狗狸がいるから
決して一人で行かない方がいい。
いいにおいがしてくるのは
狐狗狸が化かそうとしているのだ。
街には人間がいるから
決して一人で行かない方がいい。
時折ゴホゴホと音がするのは
人間が菌をばらまいているのだ。
夢にはヨコレンボが潜んでいるから
恋人たちは油断してはならない。
なぜか寝起きの悪い朝は
ヨコレンボが夢を乱しているのだ。
狭い狭い谷間の町
煤けたような灰色の雲が
まだらな雨を落としている。
この狭い狭い谷間の町に
艶抜けした黒い機関車が
まるで白く見える煙を吐き
体を揺らせながら入ってくる。
行き交う人の姿は傘に隠れ
男女の見分けすらつかぬ。
その中を薄茶色の紬女が
傘もささずに歩いている。
わめきながら歩いている。
ぼわあ・・ぼわあ・・ぼわあ・・
ありし日の昭和の雄叫びが
この狭い狭い谷間の町の
かすれゆく記憶の中に
今もこだましている。