カテゴリ: 自然

日が暮れて部屋の灯りがつくと
彼らはマンションの六階にある
我が家の窓を目がけ飛んでくる。
そして網戸に必死にしがみつき
力いっぱい声を張り上げている。
どうやらわずかに残った人生を
ここで過そうという魂胆らしい。

だけど老いさき短いセミたちよ
ここには君たちの残りの人生を
世話してやる介護士様がいない。
看取ってやるお医者様がいない。
引導をわたす大僧正様がいない。
君たちを葬ってやる施設もない。

だから悪いことは言わないから
かつてきみたちが羽化したあの
懐かしい公園の樹木に戻るんだ。
そして初めてお天道様を拝んだ
優しい優しい土の上に還るんだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加

風の絵描きさんは
白い絵の具を集めて
青空のキャンパスに
一筆で画を描きあげる
描きあげては
一番目立つ所に
その画を展示する
すべての人が
鑑賞できるように
その画を展示する



空の絵描きさん

このエントリーをはてなブックマークに追加

海原に白く見えるのは
波であり、鳥であり
遠くを行く船の色であり
窓に反射する光であり
異国からの便りであり
小人の島の灯台であり
ボートであり、ブイであり
時に跳ねる魚であり
小さなイカの群れであり
気化された潮の精であり
この季節の日差しであり
生きていくための糧であり
夢であり、希望であり
喜びの雄叫びである。



海原
このエントリーをはてなブックマークに追加


ダダダダダと雨が降りだしました。
ゴロロロロと雷が鳴りだしました。
ピカカカカと稲妻が走っています。
これから車で仕事に出かけようと
エンジンをかけたぼくにどうして
神仏はこの試練を与えるのだろう。
あまりにもあまりにもあまりにも
タイミングがよすぎるじゃないか。
もしかしたらぼくはいま「決死の
風神雷神障害物行」なる修行でも
させられているのではなかろうか。
それはないでしょう神さま仏さま。
ダダダダダゴロロロロピカカカカ
前が全然見えないじゃないですか。


IMG_0721
このエントリーをはてなブックマークに追加


トンボが飛行機を背負って飛んでいる。
飛行機はあまりに大きすぎて、
トンボにはその存在がわからない。
だけどトンボは飛んでいる。
飛行機を背負って飛んでいる。

飛行機がトンボに背負われて飛んでいる。
トンボはあまりに小さすぎて、
飛行機はその存在がわからない。
だけど飛行機は飛んでいる。
トンボに背負われて飛んでいる。


IMG_0697
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ