頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

背中を痛めた

朝のことである。
店が開店し、入荷した商品を出していると、「すいませーん」とお客さんから声がかかった。
「この商品見せてください」と言われ、その商品を取るためにしゃがんだとたん、背筋に激痛が走った。
「ズッキーン」という感じで、息が出来なくなった。
そのとき脳裏に浮かんだのは、『なんか、この痛みは!今日一日が面白くなくなるやんか』だった。
昼出のパートさんにその話をしたら、「面白いとか面白くないとかいう問題やないやろ!大きな病気やったらどうするんね!?」と言われた。
ぼくは『そうか、大きな病気は背中に激痛が走るんか』と思いながら、「大丈夫、筋の痛みやけすぐ治るやろ」と言っておいた。
その後何時間か痛みが続いたが、帰る頃にはすっかり治っていた。

ぼくは自分の病気のことを真剣に考えずに、面白おかしくその状況を説明し、さらに病院に行かないので、いつも人から注意を受けている。
以前ある人の掲示板に「ぼくは20代の頃から親知らずに穴が開いていたんだけど、治療せずに放っておいたら、何年か前から神経がニョキっと出てきて、米を噛んでも痛い(笑)」と書いたことがある。
反響が凄かった。
「私も親知らず、治療してませーん」というレスも二、三あったが、そのほとんどが「虫歯を放っておいたら、菌が頭に回るなどして大変なことになりますよ」や「早く治療して下さい」というものだった。
しかし、それでもぼくは虫歯のことは気にせずに、今もまだ米を噛む痛みと闘っている。

そういえば、最後に歯医者に行ったのはいつだったろうか?
十何年か前にもう一方の親知らずを抜いたことがあったが、その後の記憶はない。
おそらく、それがぼくの20世紀最後の歯医者だっただろう。
たしかその時、歯が「スッポン」と言って抜けたのを覚えている。
医者は、歯を抜いたところにガーゼを詰め、「今日はこちらで物を噛まないように」と言った。
しかしぼくはその言葉を忘れて、しっかりとそちらで物を噛んだ。
すると何かがガーゼに引っかかり、そのままガーゼが抜け落ち、口の中は血だらけになってしまった。
「困った。どうしよう?」と思い、無意識にポケットの中を探っていると一枚のガムが見つかった。
ぼくは血だらけの口でガムを必死に噛み、柔らかくなったのを見計らって、傷跡ににガムを押し込んだ。何とか血は止まった。しかし口の中は気持ち悪かった。

歯医者といえば、その何年か前(20代後半だった)に行った歯医者はちょっと変わっていた。
何が変わっていたかというと、そこの助手達である。
そこには若い女性の助手が4、5人いたのだが、初めてその歯医者に行った時、その中で一番若い子がぼくに付いた。
ところが、ぼくがイスに座ったとたん、「はい、クチュクチュして下さい」と言うのだ。
「え?」とぼくが言うと、「早くクチュクチュして」と言う。
『おいおい、“クチュクチュ”ちゃなんか。お前より年上やろうが!子供やないんぞ!』と思いながら、ぼくはクチュクチュした。
“クチュクチュ”の後に言ったのが、「はーい、大きなお口開けてー」だった。
他の助手にも変わったのがいた。
治療中に「ねえ、しんたさん。わたしねえ、夫とうまくいってないんよ。離婚しようと思いよるやけど、どう思う?でもねー、子供もおるしねえ。どうしようか?」と突然言い出した。
こちらは口を開けていて何も答えることは出来ない。
それに、見ず知らずのただの患者に、こんな大事なことを打ち明けること自体が間違っている。
治療が終わるまで、この二人の「クチュクチュ」と「離婚願望」の攻撃が執拗に続いた。

歯の治療が終わって何週間か立ってから、同僚がその歯医者に通いだした。
やはり彼も、あの歯医者は変わっていると言っていた。
「人をいくつと思っとるんか!」と憤慨していた。
「そういえば、あの助手二人がしんちゃんのこと言いよったよ」
「何て?」
「しんたさんって変わってますね」
その歯医者には二度と行かなかった。