ある小売店での話である。
その店には、ぼくほどではないが、けっこう白髪の多い男の人(仮にYさんとしておく)がいるらしい。
先日、その店に本社の営業部長が来たときの話。
その営業部長は、天下りでその会社に入ったらしく、その業界のことについては素人に近い。
一方のYさんは生え抜きのベテラン社員である。
他の会社のことであるから、詳しいことは知らないが、営業部長とYさんは、以前から折り合いが悪かったという。
その日、営業部長がYさんをつかまえてこう言った。
「君、その白髪頭、何とかならないかね。そういう頭で店に立つとは、お客さんに対して失礼じゃないか。染めてきなさい」
Yさんは怒りに震えていたそうである。
周りに他の社員もいたらしく、その部長は、
「君たちはどう思うかね」
と訊いた。
そこに一人、ハゲた人がいたが、その人は、
「私は髪がないですから、よくわかりません」
と言って逃げたという。
もう一人、若い人がいたらしいが、その人は、
「別にいいんじゃないですか」
と言ったらしい。
その部長は釈然としない顔をしていたという。
今日ぼくは、この話をその会社の人から聞いた。
ぼくが白髪王だから、ぜひ聴いてもらいたかったに違いない。
その人もアンチ部長派である。
ぼくは一言言った。
「実に感動的な話やねえ」
しかし、はらわたが煮えくり返っていた。
こんなことがまかり通っていたら、白毛一族はどうなるんだ。
じゃあ、ハゲはいいのか!?
「お客さんがまぶしいからヅラをつけなさい」
とでも言うのであろうか?
一目でヅラとわかる人はどうなんだ!?
「お客さんに不自然な思いをさせるんじゃない!」
とでも言うのだろうか。
しかし、これははっきり言って、セクハラである。
訴えて、慰謝料を請求すればいいんだ。
証人もいることだし。
やってやれ、やってやれ。
しこたま慰謝料をふんだくって、会社から追放すればいいんだ。
白髪王のぼくが応援してやる。
うちの会社にも天下り連中が多いから、もしかしたらぼくのところに、そういうことを言ってくる人もいるかもしれない。
ぼくは、そういう理不尽なことを言ってくる奴とは、断固戦うことにしている。
前の会社でもそうしてきたし、そのために左遷の憂き目にもあっている。
もう、多少のことには、びくともしないようになっている。
『しろげしんた』の『しろげしんた』たる由縁を否定されると言うことは、ぼくの存在や全人格を否定されるに等しいことである。
もし、そういう奴がいるのなら、人を見て言うがいい。
白髪王に逆らうと、どういう目にあうか、充分に思い知らせてやる。