最近、山口智子の出ているCMの中で、ジャニス・イアンの歌がかかっている。
『Will You Dance?』である。
昔この歌は、「岸辺のアルバム」というドラマの主題歌に使われていた。
ぼくはその当時、そのドラマを見ていなかったので、この歌にはなじみがない。
もしかしたら、ラジオか何かで聴いていたかも知らないが、その時は軽く聞き流していたのだろう。
この歌を初めて(?)聴いたのは、それから十何年も経ってから、今から10年ほど前のことである。
その2年ほど前に、ぼくは、坂口良子主演のドラマ、「グッドバイ・ママ」の主題歌になっていた『Love Is Blind(恋は盲目)』のCDを探していた。
そのとき、何かの資料で「岸辺のアルバム」の文字を見つけた。
「そういえばこんなドラマがあったなあ。『Will You Dance?』、さて、どんな歌だったか」
そう思うと、無性にその歌を聴いてみたくなった。
しかし、『Love Is Blind』も含めて、CDは手に入らなかった。
それもそのはず、その当時日本では、彼女のアルバムは、まだCD化されてなかったのだ。
あきらめていたところに、CD発売の朗報が飛び込んできた。
さっそく、CD化されたジャニス・イアンのアルバムすべてを注文した。
手に入れた時は、天にも昇る気がしたものだった。
それらのアルバムには、『Will You Dance?』の他にも、いい歌がたくさん入っていた。
かくてそれらのアルバムは、ぼくの中のベストアルバムの一角を占めるようになったのである。
買った直後は、何度も何度も彼女のアルバムを聴いたものだ。
まあ、真剣に聴くというよりは、さらっと流す聴き方ではあるが、そのほうが彼女の歌が、より染み入るのだ。
しかも、ぼくの心の状態にマッチしているのか、気分が落ち着く。
ところがしばらくして、彼女のアルバムをあまり聴かなくなった。
他に興味が移ったせいもあるが、そこには、CDを手に入れたので、聴きたい時に聴くことにしよう、という意識が働いたに違いない。
その後は2年程前に、一度聴いたっきりだった。
さて今回、山口智子のCMを見て、久々にジャニス・イアンが聴きたくなった。
山積みになっているCDの中から、何枚かあるジャニス・イアンのCDを取り出し、かけてみた。
10年前と変わらない。
やはり、彼女の歌を聴くと、気持ちが落ち着く。
彼女をエンヤのように、癒し系と呼ぶかどうかは知らない。
しかし、ぼくにとってジャニス・イアンは、十分に癒し系である。
4月に入ってから、ナイターのない日には、いつも彼女の歌を聴いている。
もちろん会社帰りに、である。
今日はホークス戦がデー・ゲームだったので、ジャニスイアンを聴いて帰った。
仕事の終わった安堵感の中で聴くジャニス・イアンは、また格別なものがある。
ところで、今日は意外なことに気が付いた。
実は、ジャニス・イアンの歌を聴いていると、見慣れた風景が変わって見えたのだ。
これと同じようなことは以前にもあった。
しかし、今日ほど鮮やかに風景が変わったことはなかった。
まるで映画の中の風景なのだ。
以前、『ブラック・レイン』という映画を見たが、あの映画で描かれている大阪の街というのは、ぼくが知っている大阪の街とはかなり違ったものに映っていた。
やはり、映画を撮る人の視点で違うのであろうが、そこには音楽の力も働いているのだと思う。
ぼくのイメージする大阪というのは、『大阪ラプソディ』や『道頓堀行進曲』のかかっている、大阪である。
コテコテの街、大阪である。
そういう既成観念を覆すような、BGMの数々。
改めて、音楽の力は偉大だ、と思ったものである。
今日はその映像を北九州に見た。
BGMは、もちろんジャニス・イアン。
タイトルは、『Blue Of The Blues』。
もしかしたら、北九州はブルースの似合う街なのかもしれない。