日頃の行いがいいのか、今日は寝坊せずに、無事に7時半に家を出ることが出来た。
さらによかったのは、渋滞の時間より早く、慢性渋滞地域を通り過ぎたので、懸念していた大渋滞にあわずにすんだ。
着いたのは、予定より20分も早く、8時5分だった。
これも、日頃の行いがよかったからだろう。
今日はいいことがありそうな気がする、と思っていると、大変なことに気がついた。
靴とズボンのすそが汚れているのだ。
「どうしたんだろう?・・・あ、そうか!」
そういえば、車を駐車した場所がぬかるんでいた。
そこで汚れたのだろう、泥がいっぱい付いている。
『ちぇっ、いい日じゃないやん』
さて、8時半になり朝礼が始まった。
今日のスケージュールや、役割分担を発表している。
その間ぼくは、「何時に帰れるんだろう」などと考えていた。
朝礼後、ぼくは同じくうちの店から応援に来ているもう一人の人と、カゴやカートの整理をしていた。
すると、商品部の課長がぼくのところに来て、「あんたんとこ店は、男二人もきとるんね」と言った。
「はい」
「二人もいらんやろ。今日からそちらも売り出しのに」
「そうですね」
「しんた君は帰っていいよ。その分売上げ上げて」
新店は食品中心の店で、一度も食品に携わったことのないぼくは、内心ほっとしていたが、もう一人の人に悪い気がして、躊躇していた。
そこに、店舗のほうの課長がやってきた。
「しんた君、帰り。ここは一人でいいよ」
ということで、ぼくは店に帰ることになった。
朝礼が8時半、ぼくが「帰れ」と言われたのが9時10分、その間やったことはカゴとカートの整理だけだった。
前の日に渋滞のことで悩み、普段より1時間半も早く起きて家を出、朝礼後に「帰れ」である。
いったい何しに来たんだろう。
さて、店に帰る時に、ひとつ気になっていることがあった。
それは、今日は普段と違う格好をしている、ということだった。
普段と違う格好とは、Yシャツ・ネクタイ姿である。
新店の応援者は全員ネクタイ着用、となっていたから、いやいやそういう格好をして行ったのだ。
ぼくは普段店では、荷出しなどの作業が多いので、Tシャツの上に店のジャンバーを引っかけているだけである。
しかも、4月に入ってからは、店の中が暑いので、ずっと半袖である。
ところが今日は、「外にいることが多くなるだろう」と聞いていたので、わざわざ長袖のYシャツを着て行った。
それが、店に戻ることで裏目に出るのだ。
「このままの格好でおろうかのう。Tシャツの新しいの買おうかのう」
そんなことを考えているうちに、店に着いた。
店長が「どしたん?」と訊いたので、帰ってきた理由を説明した。
それから売場に行き、売出しの準備をした。
しばらくして、店の朝礼が始まった。
ところが、パートさんがみな、ぼくのほうを注目している。
ぼくが「どうしたんだろう?」と思っていると、
「しんちゃん、ヘンな格好」
「何でネクタイとかしとるんね?」
と言い出した。
しまいには笑い出す人も出る始末だ。
ぼくが「そんなに、おかしいかねえ」と訊くと、「だって、見慣れんのやもん」と言う。
ぼくは、密かに『自分はネクタイ姿が似あっとる』と思っていたので、これはショックだった。
朝礼が終わった後、慌てて隣の衣料品売場に行き、Tシャツを買った。
何とか動きやすい格好に整えた。
しかし、Tシャツのほか、ポロシャツなども買ったため、結局8千円ほど使ってしまった。
予期せぬ出費である。
いずれ買おうとは思っていたが、今日買う、ということは少し損をしたような気がする。
『チェッ、全然いい日じゃないやん。ぶー』
さて、今日はここまでです。
「ミエコちゃん」を期待していた方、もう少しお待ち下さいませ。