頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

沖縄 その2

その店に入ってまず気づいたことは、全然賑やかさがないということだった。
お客もそこそこ入っているし、それ以上にホステスもいるのだが、談笑している様子もなく、ひっそりとしている。
BGMも鳴っていることは鳴っているが、全体に音が小さい。
「変な店だなあ」と思いながらも、ぼくらは席に着いた。

ほどなく、三人のホステスがやってきた。
「いらっしゃーい」
その声には明るさがなかった。
「私、○○でーす。よろしくお願いしまーす」と、各自自己紹介を始めた。
若作りはしているものの、ぼくたちよりは歳が行っている。
しばらく談笑していたが、何か盛り上がらない。
いっしょに行っていたメンバーの一人であるGさんが、「よーし、おれが景気付けに歌ってくる」と席を立ち、ステージに上がった。
Gさんは調子に乗って3曲ばかり歌った。
しかし、拍手の一つもない。
こちらのパブなら、いくら下手でも拍手ぐらいはある。
Gさんは首をかしげながら戻ってきた。
そしてぼくに「しんちゃん、この店変やねえ」と耳打ちした。
ぼくは「うん」と言ったきり黙っていた。

あまり静かになったので、ホステスの一人が、「大人しいですねえ。いつもこうなんですか?」と言った。
もう一人のメンバーKさんが、「いや、初めてだから緊張してるんですよ」と答えた。
すると、他のホステスが、「まあ、緊張してるなんてかわいい。抱かれてみたいわー」などと言い出した。
その時、ぼくの隣にいたホステスが、ぼくの腕を触った。
「へえ、腕太いねえ。何かやってるの?」
「むかしちょっとね」と言って、ぼくは力こぶを出して見せた。
「わあ、たくましい。抱かれてみたーい」
いよいよ変だ。

もう一人のホステスが、「ねえねえ、ここを出てどこか行かない?」と言い出した。
どういうわけか、KさんとGさんは乗り気である。
しかし、ぼくは気が進まなかった。
そこで、「あまり気が進まん」と言った。
どうしても民謡酒場に行きたかったのだ。
「しん、いいやないか。ちょっと付き合え」と、二人が声をそろえて言うので、ぼくはしぶしぶ付き合うことにした。

「じゃあ、OKね」とホステスは、従業員を呼んで「精算してきて」と言った。
従業員が持ってきた勘定票を見て驚いた。
一人1万円になっている。
「これ、おかしいんやない?」
「ああ、これね。チャージが5千円で、連出し料が5千円なの。ごめんね」
それほど飲んでないのに1万円の出費である。

店を出ると、そこに2台のタクシーが停まっていた。
どうやらぼくたちを待っていた様子だった。
タクシーに分かれて乗り込むと、ホステスの一人が「例の所に行って」と言った。
3分ほど走って、タクシーは止まった。
タクシー代も、こちら持ちである。
ホステスたちはタクシーを降りると、ぼくたちの腕を掴み、建物の中に連れ込んだ。
慌てて入ったので、そこがどこかわからなかったが、中の雰囲気からすると、どうやらそこはホテルのようだった。
ホステスは「ここから分かれるのよ」と言って、ぼくたちをそれぞれの部屋に連れて行った。