頑張る40代!

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バンド『TPY-ⅡB』

『TPY-ⅡB』について少し記しておく。
『TPY-ⅡB』というのは、昨日も少し書いたが、ぼくが高校時代にやっていたバンドの名前である。
ELPやCSNYのように、名前の頭文字を取ったものであるが、彼らと根本的に違うのは、その名前というのが、メンバーの名前ではなかった点にある。
では、誰の名前から取ったものかというと、それは当時バンドのメンバーが好きだったアーティストの名前だった。
Tは拓郎、Pはポール・マッカートニー、Yは陽水、ⅡBはビートルズとボブ・ディランである。
ⅡBという表記は、言うまでもなく、数学ⅡBからの引用である。

バンドは4人で、ボーカル、ギター、ベース、ドラムスというシンプルな構成だった。
バンドとしての構想は、高校2年の時からあったのだが、実際にやったのは、高校3年の夏休みだけだった。
ぼくたちが目指していたのは文化祭だった。
その文化祭のオーディションが2学期の初めにあるため、夏休みに練習することにしたのだ。
1学期の終業式の日に、オーディションの申し込みを行い、練習は始まった。

困ったことが起きた。
やる曲が決まらなかったのだ。
練習期間は夏休みだけ、という制約がある。
その短い期間に、人の歌のコピーなどしても間に合わうはずがない。
しかたなく、ぼくのオリジナル曲をやることにした。
そこには、誰も知らない曲なので、失敗してもわからないだろう、という計算があった。
当時、ぼくの高校の音楽レベルは、かなり高いものがあった。
その中で、人の曲をやるとなると、少しミスしただけでも目立ってしまう。
プライドの高いぼくたちに、それは許されるものではなかった。

まず、ぼくが何曲かのオリジナル曲を聴かせ、その中から選んだ。
とりあえず、『ゲームは終わった』と『アリ』という歌を演奏することにした。
後は、おいおい選ぶ、ということで、まずこの2曲を練習した。
どちらも、ぼくが高校2年の時に作った歌である。
この2つの歌を選んだのには理由がある。
ぼくが歌詞を見ないで歌えること、コード進行が簡単なこと、どちらも8ビートの曲なのでリズムがとりやすいこと、だった。
つまり、単調な曲なので簡単に出来る、ということである。

ぼくたちは、友人の家に機材を持ち込み、一生懸命練習した。
その中で、新しい曲も生まれた。
『ケッチョク』という曲である。
『ケッチョク』とは、高校の先生のあだ名で、「結局」というのを「けっちょく」と言うことから付いたあだ名である。
曲のほうは斬新であった。
ただ、演奏に乗せて、「ケッチョク」と繰り返し言うだけだった。

その『ゲームは終わった』『アリ』『ケッチョク』が出来るようになったのは、練習を開始して3週間ほど経ってからである。
その頃から、メンバーが集まらなくなった。
いつも誰かが欠けている状態だった。
だんだんぼくも、情熱が冷めていった。
お盆を過ぎた頃には、もう誰も練習には行かなかった。

夏休みが終わり、オーディションの日が来た。
オーディション会場では、「TPY-ⅡB」の方ー」と呼んでいたが、メンバーは誰もそこには行ってなかった。
当然、棄権と見なされて落選した。

さて、文化祭当日。
久しぶりにメンバーが集まり、せっかく練習したんやけ、どこかでやろう、ということになった。
場所は柔道場にした。
実に斬新なライブになった。
バンドが100畳ある柔道場の四隅を陣取り、客をその中に座らせることにした。
やった曲はもちろん、『ゲームは終わった』『アリ』『ケッチョク』である。
『ケッチョク』が終わった後、「凄い!」という歓声とともに、観客から拍手が巻き起こった。
その時、観客は二人であった。