頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

自慢話 その2

あるお客さんから、「ビデオが欲しいんだけど、どのメーカーのにするか迷ってるんです。仕事中なので、そちらに行けそうもない。出来たら説明しに来てくれませんか」と電話をもらったことがある。
さっそくぼくは資料を持って、そのお客さんが勤める会社に行った。
そこでいろいろ話をするうちに、そのお客さんが「ソニーファン」であることがわかった。
つまり、そのお客さんは、ぼくを呼んで、ソニーの良さを確かめたかっただけなのである。
しかし、ぼくは最後まで諦めなかった。
VHSとベータとの違いを説明し、今後はおそらくVHSの時代になるだろうという持論を展開した。
その上で、その当時発売されたばかりの、ビクターの機種(後に名器と謳われた)を薦めた。
1時間近く説得したが、その時は結論が出なかった。
結局、後日店に行って決めるということになった。
何日か後にそのお客さんはやってきた。
そして、「あの後検討したけど、やっぱりソニーにする。いろいろ教えてくれて、ありがとう。勉強になりました」と言って、ソニーを買って帰った。

もちろんそのお客さんも、VHS勝利の時には何も言ってこなかった。
しかし、このお客さんとは何かの縁があったのだろう。
それから何年かして、こんなことがあった。
その頃は、ぼくはビデオ業界から離れ、楽器業界にどっぷり浸かっていた。
楽器というと、主なお客は学生である。
彼らは一様にミュージシャンを目指している。
その中に一人、ぼくが目をかけていた男がいた。
彼はいい感性の持ち主だった。
彼のオリジナル曲を何曲か聴かせてもらったが、荒削りながらそこに彼の才能が垣間見れた。
彼はよく店に遊びに来た。
ある日のこと、「しんたさん、おれ彼女が出来ました」と一人の女の子を連れてきた。
ちょっと気の強そうな顔をしていたが、かわいい子だった。
ところが、彼女はぼくを見るなり、「あのう、しんたさんですか。父からよくうわさを聞いてます」と言った。
「え、お父さんから?」
「はい」
「名前は何と言うんかねえ?」
「○○です」
「○○・・・? うーん、覚えがないねえ」
「以前、しんたさんビデオのコーナーにいたでしょ」
「うん」
「その時、お父さんの会社にビデオを売りに行ったでしょ?」
忘れていた記憶が蘇ってきた。
「ああ、あの時の」
「はい、あの時はお世話になりました。父は、しんたさんが一生懸命説明してくれたと言って、喜んでましたよ」
商売人冥利につきる話である。
嫌なことも多いけど、こういうことがあるから客商売はやめられない。
結局、その後ぼくが会社を辞めたため、そのお父さんとは再会を果たせなかったが、今でも強く印象に残る想い出である。

さて、VHSであるが、その後ぼくの予想通り圧勝した。
過去一度だけテレビであった、映画『LET IT BE』、これをベータで録画した人、今は持ち腐れだろうなあ。

ところで、後の『レーザーディスクvsVHD』の時も、ぼくはレーザーの圧勝を読んでいた。
その当時、スナックに行くとVHDのカラオケをよく見かけた。
それを見るたびに、レーザーに替えたほうがいいよ、と助言していた。
その助言を聞き入れて、レーザーに替えた店もある。
あいかわらずVHDにこだわった店もある。
しかし、結果はご存知のとおり、レーザーの圧勝であった。
VHD店は、「あんたの言うとおり、あの時レーザーに替えとけばよかった」と言っていたが、後の祭りである。

さて、最近の『DVD』であるが、『RAM』になるのか、『-RW』になるのか、『+RW』になるのか、まだまだわからないところである。
メディアを扱っているメーカーさんも、どうなるのかまったく読めないという。
逆に「しんたさんはどう思われますか?」と聞いてくる始末である。
その時、ぼくは笑いながらこう答えている。
「さあ、難しいですねえ。どうなるんでしょうか」