いつものように日記は明日の朝書くことにして、一度寝ようと床に就いた。
ところが、変な夢を見た後に目が冴えて、眠れなくなった。
その夢の内容は忘れたが、あまり気持ちのいい夢ではなかった。
いったん目が覚めてから、眠ろうと努めたが、外はあいにくの雨。
雨が降ると、通りに面したぼくの家は悲惨である。
その通りは夜中でも車がひっきりなしに通って、ただでさえうるさい。
さらに雨が降ると、濡れた地面を車が跳ねていく音まで加わる。
普段は「ブーーー、ガーーー」なのだが、雨の日は「ブーーー、ガーーー、シャーーー」となるわけである。
ぼくはその通りは南北に伸びている。
ぼくは南向きに、通りと平行した形で寝ている。
そのため、音は頭から足、あるいは足から頭に移動していく。
寝ている時に、南から来た音に何度パンチを喰らわせ、北から来た音に何度蹴りを入れたことだろう。
窓を閉めていてさえその音は聞こえてくるので、夜は窓を開けることが出来ない。
しかも、この季節である。
暑くてやりきれない。
かといって、エアコンを付けるにはまだ早すぎる。
しかたなく扇風機で涼をとっている。
さて、寝ようと努めていた時、いろいろなことが頭をよぎった。
日記のテーマを何にしようかとか、そういえば、昼間にあんなことがあったなどである。
そういえば今日、昨日の日記を書いている時に電話がかかった。
「はい、しんたです」
「初めまして、私○○証券のものですが」
女性の声である。
「はあ」
「今、お時間よろしいでしょうか?」
「はあ、かまいませんが」
「ありがとうございます」
「ところで、どちらにおかけですか?」
「え!? しんたさんのところですけど…」
「何で調べたんですか?」
「はい…、電話帳でですけど…」
「そうですか。興味ありませんから、これで切りますね。ガチャッ」
その時、ぼくが興味あったのは、日記のネタだけである。
電話帳で調べたくらいだから、話もマニュアル通りになるだろう。
面白くない。
と、そこに「ピーン、ポーン」という間延びした音が聞こえた。
インターフォンである。
「はーい」
「あ、お忙しいところすいません」
またしても、女性である。
しかも、老け声。
「私、○グループの者ですけど」
「○グループって何ですか?」
「ああ、冠婚葬祭ですけど…」
「ああ、そうですか。冠婚葬祭の。はいはい。残念でしたねえ」
「え?」
「実は昨日、他の冠婚葬祭に入ったんですよ」
「ああ、そうなんですか」
「ホント残念でしたねえ。失礼しまーす。ガチャッ」
誰が玄関を開けるか!
冠婚葬祭の該当者なんか誰もおらんわい!
面白くない。
今日は休みだったが、今にも降り出しそうな天気だったし、下らん電話は入るし、老け声の女性は来るし、その上眠れないときている。
面白くない!