頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

ぼくの夏 前編

 『ぼくの夏』

 大きく開いた 空の下を
 夏 君と二人で歩いていく
 静かな風は 汗をぬぐって
 蝉の輝きは 時を止める

 遠くで子供達が 野球をやっている
 カビの生えた想い出が 日にさらされ
 今にも飛び出しそうな ぼくの幼さを
 君は笑って 見つめてる

 そうだこの夏 海へ行こう
 忘れてきた ふるさとの海へ
 君と二人で 子供になって
 忘れてきた ふるさとの海へ

  お祭りの夜 二人で浴衣着て
  いっしょに 金魚すくいやろうよ

 幼い頃の 想い出が
 ぼくの夏を 駆け巡る
 一足早い ぼくの夏を
 君は笑って 見つめてる


午前中は曇っていたが、夕方から青空が広がり、真夏の日差しが差し込んできた。
かなり暑い。
もはや、梅雨明けした、と言ってもいいような天気だった。
何日か前から、アブラゼミの鳴く声が聞こえている。
真夏を助長する、あの「ワシワシ…」という声も、もう間もなく聞こえてくるだろう。

さて、ぼくはこの時期になると、決まって小学校6年生の頃のことを思い出す。
夏休みに入って最初の日曜日、ぼくの地区では、毎年子供会のソフトボール大会が行われていた。
そこで優勝したチームが、区の大会に出ることが出来、そこでまた優勝すると市の大会に出ることが出来る。

同じ子供会に、Iという野球バカの男がいた。
その男とはクラスもいっしょだった。
彼は3人兄弟の末っ子ということもあり、親が甘やかしていたのだろう。
実にわがままな性格だった。
確か4年の時だったと思うが、彼は3学期、あるクラスの級長になった。
「人望のない彼がなぜ?」と、みんな噂しあったが、これには裏があった。
彼は、かねてから新しい自転車を欲しがっていた。
いつも親にそのことを言っていたらしいのだが、その頃の自転車というのは、今のように安い買い物ではなかった。
甘い親もさすがに最初は渋っていたらしい。
しかし、そこはかわいい息子のこと、ある条件を付けて自転車を買ってやることにした。
その条件というのが、「級長になること」だった。
そこで、人望のない彼は、クラスの男子を脅しにかかった。
その脅しに屈した奴らが、彼に1票を入れたのだ。
そんな彼の強引なやり方を見て、他のクラスの連中は彼のことを「卑怯者」と罵った。

5年になり、クラス替えがあった。
ぼくが新しい教室に入った時だった。
後ろのほうから「おう、しんた!」という声がした。
振り向くと、そこにIがいた。
「いっしょのクラスやのう」
「おう」と応えながらも、ぼくは『何でこんな奴と同じクラスなんか』と思っていた。

4年の時の所業をみな知っていたので、彼は新しいクラスでは嫌われ者だった。
しかし、野球がうまかったため、無視するわけにも行かず、みんな渋々いっしょに遊んでいた。
ところがその野球をする時は、なまじうまいため、自分のうまさをひけらかす。
あげくに本まで持ってきて、理論を講義する始末だった。
こちらは遊びでやっているのに、くそ真面目に理論まで持ち出すものだから、みんなは白けてしまった。
そのため、彼と他のメンバーはいつもトラブっていた。
他のクラスと試合をやっても、いつも内輪もめばかりしていた。