ところが、いったん疲れてしまった目の神経は、別に携帯を見なくても、目を開いているだけで疲労度が増す。
30分後、とうとう完全に頭痛になってしまった。
目の神経からくる頭痛は、普通の頭痛とは痛みの質が違う。
そのため、目を閉じてみたり、首筋を揉んでみたりしても、痛みが和らぐようなことはなく、かえってひどくなっていくように感じる。
そこで、眼帯を外すことを考えた。
しかし、せっかく購入し、初体験を楽しんでいた眼帯を、そうやすやすと外す気にはならない。
とにかく、慣れるまで待とう、ということになった。
それからしばらくしてからのこと。
倉庫から「商品が入荷したから移動してくれ」との連絡が入った。
行ってみると、かなりの量である。
台車で5往復はしなければならない。
困ったことになった。
台車を押している時に、もしバランスを崩すことがあったら、商品やお客さんに当てるかもしれない。
ただでさえぼくは台車の使い方が下手で、しょっちゅう什器に当てているのだ。
「しかたがない、台車を押している時だけでも、眼帯を外すか」
と、いったん眼帯を外した。
台車を押している間、眼帯はポケットの中に入れておいた。
ところが、3往復した時だった。
ポケットからはみ出ていた眼帯のひもが台車に引っかかり、そのまま床に落ちてしまったのだ。
ぼくは慌ててそれを拾おうとした。
ところが、焦ったせいで台車にぶつかってしまい、乗せている商品が眼帯の上に落ちてしまった。
そのせいで眼帯は破れてしまい、使い物にならなくなった。
結局眼帯は、目のためには何も役に立たなかった。
そればかりか、頭痛を呼び込んでしまう疫病神になってしまったのだ。
ということで、ぼくの眼帯初体験は、眼帯を買ってから3時間で終わってしまった。
後に残ったものは、ひどい頭痛だけだった。