15日の日記でオナカ君が来たことを書いたが、その日オナカ君は昼過ぎにやってきた。
特に用はなかったようだ。
いつものように世間話をした後、彼の仕事の話になった。
しんた「しかし、おまえ、いつも暇そうやのう。ちゃんと営業しよるんか?」
オナカ「今営業はほとんどやってないのう」
し「とういうことは、現場に入り浸りか?」
オ「まあ、そんなところやのう」
し「そういえばおまえ、前にまた車の営業に戻るようなこと言いよったのう」
オ「おう、それを考えよるところやのう」
オナカ君は、以前トヨタ車のセールスをやっていた。
そのおかげで、ぼくの車は歴代トヨタ車ばかりである。
車のセールスに戻ると言うことは、またぼくはオナカ君から新車攻勢をかけられることになる。
し「ところでおまえ、おれの歌聴きよるか?」
オ「ああ、プレイヤーズ王国か?最近聴いてないのう」
し「聴いてくれな困るんやけどのう」
オ「何でか?」
し「あそこに上げとる曲を、お前の営業の力で売り込んでもらうんたい」
オ「売り込む?どこにか?」
し「Sが博多で広告代理店しよるやろうが」
オ「Sに売るんか?」
し「違う。あいつに頼んで、CMでおれの歌を使ってもらうんたい」
オ「どこCMか?」
し「わからん。それはS次第やろ」
オ「それならMに頼んだほうがよくないか。あいつの会社、テレビでCM流しよるやろ。あいつ部長やけ、話が早いんやないか」
し「それもそうやのう。でも、Sはおれの歌認めとるけ、話が早い」
オ「そうか。しかし、売り込むなら、CD作るほうが先やないんか?」
し「そりゃそうやけど、金がかかるらしいけのう」
オ「しかし、それがないと始まらんやないか」
し「じゃあパソコンで作ることにするわい。あとはおまえが売り込みに行った時に、『もっといい音がほしければ、そちら持ちで作って下さい』と言え」
オ「おれが言うんか?」
し「おう、おまえが社長やろ」
オ「社長?」
し「そう。おまえは芸能プロダクションの社長」
オ「また、そんな勝手なこと言うて」
し「いや、おれは前々から、おまえを社長にしてようと思っていた」
オ「じゃあ、おまえは何するんか?」
し「おれは職人でいい」
オ「何の職人か?」
し「歌職人ということにしとこう」
オ「しかし、CMだけで儲かるんかのう?」
し「儲かるかどうかは、社長の努力にかかっとる」
オ「他に何をするんか?」
し「有線でかけてもらうとか、色々あるやろう」
オ「それもおれがするんか?」
し「当たり前やないか。社長なんやけ。うまくいけば、老後は安泰ぞ」
オ「そうか。じゃあ、すぐにデモテープ作ってこい。あまりおまえの歌を知らんけのう。こういうのは知っておかんと説得力がないやろ」
し「そうやのう。じゃあ、すぐに作って参ります、社長」
オ「おう、吐くまで聴いてやろうやないか」
目下のところぼくの夢は、オナカ君を社長にすることである。