頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

頑張るタマコ!21歳(下)

まず手始めに、基本的なことからというので、メモ用紙に九州地図を描き、そこに県名を入れさせることにした。
「おい、ここが福岡県。じゃあ、ここは何県か?」
と、福岡の左横を指さした。
「わかりますよ、そのくらい。佐賀でしょ」
「お、わかるやないか。じゃあ、ここは?」
「バカにしないで下さい。長崎じゃないですか」
「じゃあ、ここは?」
と、ぼくは福岡の右下を指さした。
「こういうのは得意なんです。そこはですねえ、岡山県です」
ぼくは笑うのを必死に堪え、「じゃあ、ここは?」と、その下を指さした。
「岡山の南だから…、ああ、広島県です」

それを見ていたラーさんが、長崎の左横に彼女の出身地である五島列島を描き加えて、「タマコちゃん、ここは?」と聞いた。
タマコはいかにも自信ありげに、「そこは、島根県です」と答えた。
ラーさんは腹を抱えて笑い出した。
「おまえ、知っとる県名を並べよるだけやないか。ちゃんと勉強してこい」
と、ぼくは売場に戻った。

それから一時して、「しんたさん、わかりましたよ」とタマコがやってきた。
手に先ほどのメモ用紙を持っている。
それを見ると、そこには正しい県名が書かれていた。
「ちゃんと自分で考えたんか?」
「当たり前じゃないですか。任せて下さい」
ところがよく見ると、その県名、所々ひらがなで書かれている。
そこでぼくが「おまえは『大分』という漢字も書ききらんとか?」と聞いくと、タマコは「ちゃんと書けますよ」と言う。
「じゃあ、書いてみろ」
さすがタマコである。
期待通り書いてくれましたわい。
【大痛】
「じゃあ、鹿児島はどう書くんか?」と聞くと、【鹿ご鳥】と書く。
「おまえは、漢字から勉強せないけんのう」

最後にこの質問をしてみた。
「おまえは都道府県というのを知っとるか?」
「知ってますよ、そのくらい」
「じゃあ、東京は東京何と言うんか?」
「東京県」
「東京けん?ラーメン屋やないんぞ。じゃあ大阪は?」
「大阪県」
「北海道は?」
「北海道県」

さすがにバカボン似である。
これでは幼稚園の先生どころではない。
もし今タマコが幼稚園の先生になったら、「浴衣着てお祭りに行ったんやけど、その時下駄のタビが切れて困ったっちゃね」とか、「この間、東京県に行った時、ナンパされたんよ。『田舎どこ?』と聞かれたけ、『福岡県。岡山県の上の』と教えてやったっちゃ」とかいう会話がまかり通るようになってしまう。
「おまえねえ、幼稚園の先生になる前に、園児からやり直せ」とぼくが言うと、バカボン似のタマコは、人ごとのような顔をして、口をぽかーんと開けていた。

タマコは今21歳。幼稚園の先生を目指している。