先日、お客さんが少なかったので、暇つぶしにタマコに国語のテストをさせた。
メモ紙に、
『梨』『蛍』『西瓜』『南瓜』『蜜柑』
と書き、
「この漢字に読み仮名をつけてみ」
とタマコに言った。
さっそくタマコはボールペンを持ってきて、問題を解きだした。
「これは『なし』、これは『ほたる』…」
「おっ、タマコ出来るやないか」
「あたりまえじゃないですか、このくらい」
「じゃあ、次のは何か?」
「これは『にし』だから…、ああ『にしづめ』じゃないですか。で、次のは『みなみづめ』でしょ」
「『うり』やろが。それにそんな読み方はせん」
「えっ、違うんですか?」
「違う。次のは何と言うんか?」
「みっこん」
「『みっこん』ちゃ何か?」
「みっこんです」
これを見ていたラーさんが、
「三つとも食べるもんよ」
とヒントを与えた。
「ああ、食べるもんですか。じゃあ簡単じゃないですか」
と、『にしづめ』を消して『つけもの』と書き、『みなみづめ』を消して『なすび』と書いた。
「おい、何でこれが『つけもの』で、これが『なすび』になるんか?」
とぼくが言うと、タマコは
「だって、わたし、なすびが好きなんです」
と言う。
「好きやけと言って、勝手に字を変えるな。じゃあ、『みっこん』は何なんか?」
「ああ、『みっこん』は間違いです。これは『みつまめ』です」
いよいよアホである。
続いてラーさんが、
『閑かさや ○○にしみ入る 蝉の声』
『古池や ○○○飛び込む 水の音』
『雀の子 そこのけそこのけ ○○○が通る』
と書き、
「○の中、埋めてみてん」
と言った。
「蝉だから、これは『夏』ですよ」
確かに、蝉は夏の季語ではあるが…。
「えーっと、これは…、水の音だから『サカナ』、いや『イルカ』です」
タマコの中では、イルカは池の中に住んでいるらしい。
「そこのけそこのけ…、雀だから、これは『ネズミ』です」
わけがわからない。
あと、
「おまえ、『くだもの』を漢字で書ききるか?」とぼくが言うと、
ちゃんと『果物』と書いた。
「おお、書けるやないか」
「当たり前じゃないですか。馬鹿にしないで下さい」
「じゃあ、『やおや』は?」と言うと、
『八尾屋』と書いた後、
「あっ、違った」と言い、
『八屋八』と書き換えた。
「やっぱりタマコやのう」
ということで、国語は、
1,『蛍』=『ほたる』で、○
2,『梨』=『なし』で、○
3,『西瓜』=『つけもの』で、×
4,『南瓜』=『なすび』で、×
5,『蜜柑』=『みつまめ』で、×
6,『(なつ)にしみいる』で、×
7,『(イルカ)飛び込む』で、×
8,『(ネズミ)が通る』で、×
9,『くだもの=果物』で、○
10,『やおや=八屋八』で、×
10問中3問正解で、3点という結果になった。
100点満点だと30点になるから、ぼくの行った高校では、欠点をぎりぎり免れる点数(当時)だ。
タマコは今21歳。幼稚園の先生を目指している。
・・・道は険しい。