【1】
『皆さん初めまして、タマコです。
しんたさんが変な事ばかり書いていますが、あれはウソです。
本当の事は、幼稚園の先生をめざしている事だけです。
私は本当はIQ200ぐらいの天才で、都会育ちやし、全くパーフェクトの女なんで、しんたさんが言ってる事は信じないで下さいね。
タマちゃん』
算数や国語のテストの後、ぼくはタマコの文章力を見てやろうと思い、タマコに、
「これから毎日日記を書いてこい」
と言った。
「日記書いてどうするんですか?」
とタマコが聞くので、ぼくは、
「ホームページに載せて、おまえの馬鹿さ加減を、全国の人に知らせてやる」
と言った。
その結果が、上の日記である。
そうか。
これが、「IQ200ぐらいの天才」が書く文章なのか。
見習わなくてはいけない。
天才の文章は、「都会育ちやし」などと標準語の中にさりげなく方言を入れていくのか。
これは勉強になるわい。
ちなみにタマコの言う「都会」というのは、パチンコ屋のネオンがギラギラしているところである。
【2】
『6月12日
今日は1:30~20までのバイトでした。
T子さんと一緒に働きました。
T子さんは、はっきり言っておかしい人です。
私とかマジでまともです。
T子さんは、いきなり「あっ、そうそう」などと言い出したり、時々変な事を真顔で話したりします。
だから、私より大先輩だけど、一緒に働いている時は、私がT子さんをまとめています。
だけど、そんなおかしなT子さんは、私は好きです』
「1:30」と書いているくらいだから、「20」というのは、おそらく「20:00」ということなのだろう。
ということは、彼女は1時半から20時まで仕事をしたことになる。
6月12日と言えば、先週の土曜日だが、あの日タマコはいつ寝たのだろう。
まあ、タマコは元気いっぱい油を売っていたから、きっと2,3日寝なくても大丈夫なんだろう。
しかし、ぼくの会社では、こんな長時間の労働は認めていない。
というより、店の営業時間は「10:00~20:00」なので、当然「1:30」に店は開いてない。
いったい、タマコは1時半から10時までの8時間半、どこで仕事をしていたのだろう。
【3】
ところで、先日、「七夕の飾り付けをするので、短冊に何か書いてくれ」と頼まれた。
別に、ぼくは願い事があるわけでもない。
いったんは「書くことがない」と辞退したのだが、「数が足りない」としつこく頼むので、渋々短冊書きを引き受けた。
「さて、何を書こうか?」と、いろいろ悩んだ末、あることを思いついた。
「ああ、あれがあった!」
ということで、「あれ」を書いた。
『タマコが無事幼稚園に入園出来ますように』
タマコは今21歳。幼稚園の先生を目指している。