頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

左遷(4)

さて、突然「外に行って売ってこい」などと言われても、売れるものではない。
それ以前に行く所がない。
仕方なく、知り合いに片っ端から電話をかけてみた。
「あ、しんたです。お世話になってます。実は…」
ぼくは事情を話し、誰か電化製品を買う人はいないか聞いてみた。
しかし、どの人も、
「うん、事情はわかった。しんたさんにはいつもお世話になっているから、力になってやるよ」
と同情して、協力するとは言ってくれるけれど、最後に必ず、
「だけど今日買う人はおらんかと言われてもねえ…」
という言葉が返ってきた。

ぼくは意地になっていた。
とにかく、店長を見返してやりたかったのだ。
それが初っぱなからこんなことでは、あの店長から嫌みを言われ悔しい思いをするのは目に見えている。
そういうわけで、気がつけば母の知り合いにまで電話をかけていた。
そして何とか、一台目の売り上げを作った。

それは冷蔵庫だった。
母の知り合いに電話をかけた時に、「知り合いで冷蔵庫を買い換えようという人」という情報を得たのだ。
さっそくぼくは電車に乗って、その人の家に向かった。

「あのう、Yさんからこちらに行ってくれと言われて来たんですが」
「ああ、電気屋さん。ちょうどよかった。この冷蔵庫がおかしいんよ。もう寿命なんかねえ」
「どのくらいお使いですか?」
「うーん、もう15年になるかねえ」
「ああ、そうですか。もうメーカーに部品もないでしょうね」
「そうよねえ。じゃあ、買い直すわ」
ぼくは店に電話して、おすすめの一品を聞いた。
そして、その機種をその人に勧めた。
「ああ、それでいいよ。すぐに持ってきて」
そうやって商談はまとまった。

2日目、前日に電話をかけていた人から情報を得て、テレビが決定する。
3日目も同じように売り上げを作った。
そうやって、与えられた予算をクリアしていった。

終業後、ぼくたちは毎日店長に日報を提出しなければならなかった。
ぼくの日報を見て店長は、「フン、なかなか優秀やないか、しんた君。でも、これがいつまで続くかのう」と嫌みを言った。
それを聞いても、ぼくは気にしない振りをしていた。
内心はそうではなかった。
怒りにうちふるえていたのだ。
しかし、それを口にはしなかった。
ここで何か言ってしまうと負けであるからだ。
ぼくは必至に耐えていた。

外販部隊を立ち上げてから3週目に、ぼくは月の予算を達成していた。
初日に電話をかけまくったのが功を奏したのだ。
4日目以降は毎日売れるようなことはなかったが、それでも何日かおきに売り上げが上がった。
その売り上げを見て、店長は苦々しく思っていたようだった。
「あいつ、本当に売ってきよるんか?」と、各売場に聞いて回っていたようなのだ。
確かに店長一派はぼくの敵だったが、それ以上にぼくには味方のほうが多かった。
そういう人が、「しんたはちゃんと外で売ってきています」とフォローしてくれていた。
それを聞くたびに店長は、不愉快な顔になったという。