いつの頃からだったろうか。
冬場になると、乾燥肌に悩むようになった。
とにかく痒い。
痒いから掻く。
掻くとそこにブツブツのようなものが出来る。
それがまた痒い。
さらに掻く。
するとそこが傷になる。
血が出る。
かさぶたが出来る。
そしてアザになる
その部分は年中汚い色をしている。
特に足や尻をやられる。
そこはファンヒーターや電気カーペットの熱が直接あたる場所である。
何せ『乾燥肌』という言葉がまだ一般的ではなかった時代のことだ。
そのため、最初は汗疹だと思っていた。
そこで、なるべくファンヒーターの風に触れないように足を遠ざけたり、カーペットの上に直接座らないようにして、汗を抑えることにした。
そのおかげで、痒みは少し緩和されたように思えた。
ところが、そうではなかった。
そういうものに触れなくなっても、風呂に入ったりすると同じように痒いのだ。
痒ければ掻く。
で、冒頭のようなことになる。
これは汗疹ではない。
ある時、「もしかしたら、これはアトピーではないか」と思うようになった。
「そういえば、アトピーには海水療法が効くと何かの本に書いてあった」
そこで、さっそく天然塩を買い込んできて、直接患部にすり込んだ。
痛みが走ったが、それは計算ずくだった。
痒みと痛みの調和は妙に心地よいものだった。
ところが翌日、患部がしなびたリンゴの皮のようになっていた。
触ってみると、神経が麻痺しているようにも思えた。
「これはいかん!」
そう思って、天然塩はやめた。
『乾燥肌』という言葉が一般的になり、ようやくぼくの症状は乾燥肌によるものだということがわかった。
そこで、乾燥肌について書いている本を読んでみたのだが、そこには「乾燥肌になっても、むやみに掻いてはならない」と書いてあった。
しかし、痒いものは痒い。
意識して掻かないようにしていても、例えば寝ている時などは無意識のうちに掻いてしまっている。
朝起きると、足に多数の掻き傷が出来ていることがしょっちゅうあるのだ。
そこで、痒みを抑えるためにクリームやローションを塗るようになった。
先日、いつものように寝る前にクリームを塗っていると、嫁ブーが、「乾燥肌には、尿素がいいらしいよ」と言った。
「尿素?小便か?」
「尿素やけ、そうやろうねえ」
「小便なんかつけんぞ。寝る前に小便つけて寝たら、布団が臭くなる」
「いや、そうじゃなくて、尿素入りのクリームとかがあるんよ」
「尿素入りのクリーム?誰の小便が入っとるんかのう」
「別に小便が入っとるわけじゃないと思うけど…」
そこで今日、店で肌荒れ用のクリームやローションが置いてあるところを見て回った。
なるほど、「乾燥肌に効く」と謳っているクリームやローションには、ちゃんと「尿素入り」と書いてある。
効くと言うのだから試してみようと思い、一番安いクリームを買うことにした。
パートさんが「ローションのほうが効くよ」と言ったのだが、尿素入りのローションはイメージが悪い。
小便が入っているように思えてならないのだ。
買った後、さっそく足に塗ってみた。
そこは、ちょうど靴下のゴムのの部分があたるところで、朝から痒くてたまらなかったところだ。
塗ってからしばらくすると、何となく痒みが治まったような感じだ。
で、今はと言うと、ほとんど痒みがない。
ということで、しばらくこれを試してみようと思っている。
尿療法で糖尿が治ったという話を聞いたことがあるが、乾燥肌にも効くのか。
小便は偉大である。