ここまで二つの候補が上がっている。
ひとつはガムである。
虫歯にならないと言われている、キシリトール入りのガムを噛むのだ。
ガムなら、食べかすまで取り除いてくれるから、言うことはない。
しかし、問題がなくはない。
それは、客商売をやっているがゆえに、仕事中には噛めないということだ。
しかも出費がかさむ。
ただでさえ、タバコの量を減らして、小遣いを増やそうと思っているのだ。
ここでガムなんか買ったら、タバコを減らす意味がなくなってしまうではないか。
もうひとつ言わせてもらうなら、タバコと違い、ガムは自動販売機で売ってないので、どうしてもスーパーやコンビニまで足を運ばなければならない。
それが面倒だ。
ということで、ガムは却下。
もう一つの候補、それはお茶である。
若い頃、ぼくは何のためにお茶を飲むのかが、よくわからなかった。
食物の喉の通りをよくする潤滑油、もしくはご飯やおかずに合う清涼飲料水、そのくらいの認識しか持ってなかったのだ。
ところがある時期から、お茶にはカテキンというものが入っていて、これが実に体にいいということが言われ出した。
その時からぼくは、お茶を梅干しや納豆と同じく、健康食品の一つに数えるようになった。
そういう一種の薬膳のような食事を、われわれ日本人は伝統的にやってきたことも、それでわかったのだった。
で、カテキンのどこがそんなにいいのか?
それは何と言っても、殺菌効果である。
お茶でのうがいは下手なうがい薬より効果がある、というのは、今や世間の常識になっているくらいだ。
風邪菌をやっつけることが出来るほどの力を持つカテキンだから、虫歯菌なんかはチョロいものだろう。
ということで、このお茶を利用しない手はない。
さらにお茶は、そのへんのうがい薬のようにえぐくなく、仮にそのまま飲み込んでも害もないという利点もある。
食後、お茶でクチュクチュやって、あとはゴックンと飲み込んでもかまわないということだ。
見た目は悪いだろうが、やっている本人からすれば、ただお茶を飲んでいるに過ぎないわけだ。
これなら、ぼくにだって一生続けることが出来る。
もしかしたら、食事の時にお茶を飲むというのは、元々そういう意味があったのかもしれない。
であれば、お茶はモンダミンだったということになる。
きっと歯磨き粉などの出現により、そういうことが忘れられてしまったのだろう。
昔の人は、直感的にお茶の効用を知っていたのだ。
だからこそ、ぼくのような継続性のない人間にも、意識せずに継続出来るようにと、食事の友としたのかもしれない。
ところで、もしその当時にモンダミンがあったとしたら、先人たちはそれを食事の友として利用しただろうか?
きっと、誰もそう思わないだろう。
しかし、納豆を食卓に乗せた先人である。
きっと何らかの方法をとって、食卓に乗せたに違いない。
もしそうなっていたら、われわれ子孫は、今頃、お茶漬けならぬモンダミン漬けを食べていたことだろう。
…何か気持ち悪い。
というより、そんなもの食えるか!
ともあれ、モンダミンに飽きた後は、お茶で歯の健康を保とうと思っている。