昨日、飲んでいる途中に「カラオケに行こう」と言いだしたのは、ヒロミだった。
翌日が早いこともあり、ぼくは遅くとも終電で帰ろうと思っていたが、こういう機会は滅多にあることではない。
そこで付き合うことにした。
ヒロミとカラオケに行くのは、およそ20年ぶりになる。
その頃のヒロミは、どんな歌でもつまみ食い的に歌っていた。
カラオケに行くと、3曲につき2曲の割合でマイクを握っていたものである。
ところが、最近そのヒロミが歌わない。
夏にうちに来た時もカラオケボックスに行くことを拒んだし、先月飲みに行った時もカラオケに行こうなどとは言わなかった。
それには理由がある。
鼻炎である。
そのせいで声が出ないのだそうだ。
しかし、昨日は違った。
そのヒロミが「カラオケに行こうと言い出したのだ。
中リンも、嫁ブーも、もちろんぼくも、歌うことは嫌いではない。
そういうことで、一次会が終わって、カラオケボックスに行くことになった。
さて、カラオケ行きが決まったのはいいが、どこに行こうかということになった。
一次会のすぐ近くにカラオケボックスがあったが、どうもヒロミはそこがお気に入りではないらしい。
「最近、駅前に新しいカラオケボックスが出来たっちゃ」
「何という店?」
「サニタックス」
「駅前のどこにあるんか?」
「ほら、そこよ」とヒロミは信号の向こう側を指さした。
見ると、確かにそこにカラオケボックスがあった。
しかし、店の名前は『サニタックス』ではない。
「あそこ『シダックス』と言う名前じゃないんか?」
「そうよ、サニタックスよ」
「シダックスやろ」
「ああ、そうそう、シダックス。わたし何でサニタックスとか言ったんかねえ?」
「知らんぞ」
「ねえ、サニタックスって何かねえ?」
「知らん」
その後もヒロミは、店の名前をしきりに『サニタックス』と言っていた。
カラオケボックスに入ってしばらくすると、ダンスの練習を終えたヒロミの子Mリンがやってきた。
そこから、昨日の日記『カラオケ中継』を書き出したわけである。
順調にいけば、ヒロミの歌う姿を写真に撮って、文章とともにそれを載せるはずだった。
ところが、その時アクシデントが起きた。
そう、携帯の電池切れである。
そのため、日記もそこで終わってしまったのだった。