8軒目の店、そこは前の7軒とは若干趣が違っていた。
それまでに行った7軒はコミックを中心とした本と、CDやDVDといったソフト類で構成されていたのだが、8軒目に置いてあった本はコミックだけで、その他にあったのはCDやDVDではなく、何とフィギアだった。
どうもマニア御用達の店のようだ。
ぼくは一瞬戸惑った。
だが、コミックの量が半端じゃない。
そこで、そういうことには目をつむって、本を探すことにした。
『HAPPY!』はほどなく見つかった。
しかし、あったのは1巻と2巻だけだった。
「やっぱりここもだめか」
そう思って、店を出ようとした時だった。
入口付近に、コミックのセットが置いてあるのに気がついた。
他の店にもセットものはあったのだが、値段が高いので目もくれなかった。
ところが、そこのセットものは破格値で売っているのだ。
そこで念のために、探してみることにした。
すると、その一角の下の方に、『HAPPY!』という文字が見えた。
「あった!」
23巻すべて揃っているのだ。
価格を見ると、やはりそれも破格値で売っている。
しかも、本の程度は良さそうだ。
ぼくは迷った。
全巻まとめてラッピングしているから、おそらくバラ売りはしてくれないだろう。
ということは、全巻買わなければならない。
となると、それまで買ったものが無駄になる。
しかし、これを逃すと、門司や小倉といった慣れない場所に行かなければならない。
それも、残りの本があるかどうかはわからないのだ。
いちおう財布の中を覗いてみた。
『HAPPY!』を買うためにいちおう軍資金を用意していたのだが、先ほど買った5冊分をさっ引いても、全巻買えるだけの余裕はあった。
というより、それほど安いのだ。
それで決心した。
ぼくはラッピングされた本の塊を持ってレジに行った。
そして家に帰って、さっそく15巻から読み始めた。
ということで、『HAPPY!』問題は一日で解決したのだった。
ところで、今まで持っていた14巻までと、新しく買った5冊をどうするのかというと、決して売ったりはしない。
予備で持っておくつもりだ。
ぼくは本を風呂に入って読むので、たまに濡らすことがあるのだ。
他の本はともかく、『HAPPY!』は絶版ゆえに、もう手に入らないからだ。
さて、これで現在までに発売されている浦沢直樹のコミックは、すべて揃ったことになる。
あとは現在連載している『20世紀少年』と『プルートウ』のコミック続刊を、気長に待つばかりである。