突然けたたましく携帯電話のベルが鳴った。
何だろうと見てみると、消防署からの災害メールだった。
さっそく読んでみると、ぼく家の近くで建物火災が起きているという。
「おい、近くで火事ぞ」と、ぼくは嫁ブーに声をかけた。
「え、どこで?」
「すぐ近くみたい」
「そういえば、さっきからサイレンの音がしよったんよね」
「そうか。おれは聞こえんかったぞ」
「うん、わりと遠くで音がしよったけ、しんちゃんの部屋からだと聞こえんかったかもしれんね」
「どこかのう」
そう言って、ぼくたちは火の出ているところを探した。
「あっ、あそこよ、あそこ!」
嫁ブーが大声を張り上げた。
見てみると、なんとすぐそばの団地ではないか。
そこで、ぼくたちは現場に向かったのだった。
燃えていたのはその団地の5階で、消防署員がクレーン上から放水して消火にあたっていた。
ぼくたちが現場に着いた時は、一番火の勢いが強かった時だったようで、下から隊長らしき人がマイクを使っていろいろと指示を出していた。

周りには真夜中(午前1時過ぎ)にもかかわらず、けっこう多くの野次馬が集まっていた。
こういう時というのは、見ず知らずの人相手でも話が弾むようで、嫁ブーはまったく知らない婆さんと話し込んでいた。
ぼくたちが現場に着いてから20分ほど経って火は収まり、あとは白い煙がモクモクと湧き出ているだけになった。
そこで、帰ろうかと思い、嫁ブーのいる方を見ると、なんと嫁ブーはまだその婆さんと話していたのだった。