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1,
 福岡県に水巻という町がある。その昔は炭鉱町だったが、今は北九州市のベッドタウンになっている町だ。
 その水巻町に、『月夜待』という名の交差点がある。場所はJR東水巻駅(福北ゆたか線)の上にある。
 なんで上なのかというと、線路と道路が立体交差していて、道路が上を走っているためで、この交差点は駅の上を数メートル西に寄ったところにある。

 ぼくがこの交差点を知ったのは19歳の頃、当時やっていた運送会社のバイトでそこを通った時だった。
 運転手さん人に、
「あれ、何と読むんですか?」と聞いたら、
「つきよまち」と教えてくれた。
 ロマンチックな名前だなと思い、その時からいつかこの『月夜待』をテーマにした歌を作りたいと思っていた。

 それが出来たのが25歳、高校時代から好きだった人の結婚を聞いた時だった。本当ならこの名前のようにロマンチックな歌にしたかったのだが、結局は失恋の歌になってしまった。

2,
月夜待
君に逢えれば こんなことだって
忘れられると 思ったものさ
笑い話に 君のことを
歌ったことも 昔のことさ

夢はいつも 美しいもので
しあわせそうな 二つの影を
映し出しては 消えていった
あこがれては 思い悩み

 つきよまちから 二つの道を
 選ぶいとまが 君との川で

流れては 遠くなる恋を
見つめては しあわせなんか
こんなおれに くるもんかと
つぶやきながら あおる酒よ

 つきよまちから 二つの道が
 出逢うところで 君を夢見た

いつか知らず 時は過ぎていった
君に逢えるのは 夢の中だけと
つきよまちに かすかに浮かぶ
月を見ては 君を想う


3,
 この曲が浮かんだのは会社帰りに、駅から自転車で家に向かっている途中だった。曲を忘れまいとして、そこからダッシュで帰ったのだった。
 家に帰ってから、さっそくラジカセに録音した。その後、すぐに詩に取り組んだのだが、五分で出来てしまった。しかも、この詩は作った時のままで、その後一切修正を加えてない。きっと自分の中で熟成していたのだろう。

4,
 この歌を作った当初、ぼくは失恋のこともあって、この歌をまったく評価してなかった。ところが、友人が「月夜待という歌、けっこういいね」と言いだした。そして仲間内でちょっと話題になった。それに気をよくしたぼくは、それから数年後に、この歌をレコード会社に売り込んだ。しかし、聴いてくれたのかどうかわからないまま、うやむやになってしまった。その後も、ことあるたびに、レコード会社や明太子屋に、この歌を売り込んでみたのだが、やはりダメだった。

5,
 しかし、どうしてここを『月夜待』と言うのだろう。その辺に住んでいる友人にそのことを聞いてみたのだが、「知らん」と言う。前の会社の上司もその辺に住んでいるので聞いてみたが、やはり「知らん」と言われた。
 まさか炭鉱繋がりで、「月が出た出た、月が出た」の炭坑節と何か繋がりがあるのだろうか。そうだとしたら嫌だな。この地名の持つムードが壊れてしまう。
 ぼくとしては、夏目漱石が言うところの「月が綺麗ですね」の月であってほしい。

 ※なお、この詩の『月夜待』と実際の『月夜待』は、地理上若干の違いがあります。歌詞を優先にしたためです。悪しからず。
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傾きかけた日々
傷ついた部屋に閉じこもって
ぼくは何気なくマッチをすった
前からやっていたような気もするけど
これが初めてのような気もする

 その日太宰府は雨の中にあった
 ただいつもと違うことは傘が二つ
 小さな梅の木はただ雨の中に
 そうやっていつも春を待つんだろう

マッチをすっては何気なく消して
また新しい火を起こしながら
うつろに風を眺めている
だけどそれも何気なく忘れて

 騒ぎすぎた日々と別れるように
 今日太宰府は雨の中にあった
 もう今までのようなことはないような気がする
 あるとすれば次には君がいる



1,
 高校2年の秋、その頃付き合い始めた人と初めてデートした。場所は太宰府だった。
 小雨の降る中、天満宮を二人で歩いたのだが、なぜか彼女がよそよそしい。あまり喜んでないようなんだな。話しかけても、素っ気ない返事を返してくるだけだったし。何の進展もないデートだった。
 「この付き合いは失敗だったかも」と感じたぼくは、その後だんだん彼女と距離を置くようになり、付き合いは自然消滅したのだった。
 それと前後して、ぼくは停滞期に入っていき、運気に活発さがなくなっていった。再び活発になるまでおよそ5年かかってしまう。

 今日投稿した『傾きかけた日々』という歌は、運気が再び活発化した5年後に、その太宰府前後のことを思い出して書いたものだ。

2,
「小さな梅の木はただ雨の中に・・・」
 結局、なぜ彼女がよそよそしかったのかは、わからないままだ。実は馴れ合いで付き合いだした二人だったから、彼女の心の中にぼく以外の人がいたのかもしれないな。かく言うぼくも、心の奥底に忘れようとしていた人がいたのだから、もしかしたら彼女もぼくのことをよそよしく感じていたのかもしれない。お互い、心の内を傘で隠すことが出来なかったということだ。
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